スーパーの輸入果物コーナーに行くと「オルトフェニルフェノール(OPP)」の字をよく見かけます。
オルトフェニルフェノールはカビの発生を防ぐ防カビ剤として使用されており、数多くの輸入果物に使用されているのが現状です。
しかし、オルトフェニルフェノールには様々な危険性があると言われています。
本記事では、オルトフェニルフェノールの概要と危険性について解説していますので、興味のある方はぜひ最後までご一読ください。
オルトフェニルフェノールとは
オルトフェニルフェノール(OPP)とは、食品添加物として認可されている防カビ剤の1つです。
日本では1955年に農薬として認可されましたが、1969年に農薬としての認可は失効となり、後の1977年に食品添加物の防カビ剤として認可されました。OPPのナトリウム塩である「オルトフェニルフェノールナトリウム(OPP-Na)」も、この際に食品添加物の防カビ剤として認可されています。
オルトフェニルフェノールは主に輸入果物に使用されており、輸入の過程で果物にカビが生じないよう、ポストハーベスト農薬(収穫後に使用する農薬)として使用されます。ちなみに、日本ではポストハーベストが禁止されているので、国産の果物にオルトフェニルフェノールが使用されることはありません。
また、中国産の割り箸(木・竹製)にも防カビ剤として使用されているケースがあるとされています。
輸入果物に使用される際には、果物の表皮に散布、または塗布する形で使用されます。
オルトフェニルフェノールを食品添加物として認可した経緯
1974年、厚生省(現厚生労働省)は当時認可されていなかったOPP、及びチアベンダゾール(TBZ)が使用された柑橘類を輸入しないよう警告を出していました。
そのような中、1975年4月に農林省(現農林水産省)がアメリカから輸入されたグレープフルーツとレモン、オレンジを検査したところ、グレープフルーツから16.9ppmのOPPが検出されました。当時、これは食品衛生法違反に当たることから、厚生省は輸入業者に対して廃棄処分を命じ、これらは海へ捨てられたとされています。
しかし、アメリカ国内ではこのことに対し怒りの声が上がり、アメリカ政府は日本政府にOPPの使用を認めるように強い圧力をかけてきました。
日本国内の消費者からは強い反対の声が上がりましたが、当時日本とアメリカの間には貿易摩擦が生じていたこともあり、1977年4月に厚生省はOPPとOPP-Naを一緒に食品添加物として認可したとされています。
なお、当時のこの経緯は「日米レモン戦争」と呼ばれているそうです。
オルトフェニルフェノールの使用基準
オルトフェニルフェノールはかつて農薬として認可されていたことから、その毒性の強さはよく知られているので、食品添加物として使用する際には厳しい基準が設けられています。
まず、オルトフェニルフェノールを食品添加物として使用する場合には、その対象は柑橘類に限られます。その際の使用量については、10ppm(0.010g/kg)以下と厳しい基準が設けられています。
また、オルトフェニルフェノールを使用した果物はその旨を分かりやすく記すよう、食品表示法によって表示義務が課せられています。袋売りではシールなどに、バラ売りでは値札や陳列棚などにオルトフェニルフェノールが使用されている旨の表示が必ず必要です。
なお、オルトフェニルフェノールナトリウムについても同様の使用基準となっています。
オルトフェニルフェノールの危険性
オルトフェニルフェノールには複数の危険性の報告がなされています。
例えば、1984年の東京都立衛生研究所(現東京都健康安全研究センター)の報告によると、ラットにOPPを1.25%含む餌を91週間食べさせたところ、83%(20匹/24匹)の割合で膀胱がんが発生したことが確認されています。
引用:内閣府食品安全委員会事務局 平成23年度食品安全確保総合調査「オルトフェニルフェノール」(44ページ 表2)
また、1981年の東京都立衛生研究所の報告によると、ラットにOPP-Naを0.5~4%含む餌を91週間食べさせたところ、2%含む餌を食べたラットにおいて95%(20匹/21匹)の割合で膀胱や腎臓にがんが発生したことが確認されています。
引用:内閣府食品安全委員会事務局 平成23年度食品安全確保総合調査「オルトフェニルフェノール」(45ページ 表4)
さらに、厚生労働省の安全データシートには危険有害性情報の箇所に以下のような記載もあります。
- 飲み込むと有害
- 重篤な皮膚の薬傷・眼の損傷
- 重篤な眼の損傷
- 発がんのおそれの疑い
- 昏睡又はめまいを起こすおそれ
これらのことを踏まえると、OPPやOPP-Naには発がん性を含め様々な危険性があることから、極力避けた方が良いと言えるでしょう。
ちなみに、1999年の三重大学の報告によると、OPPの発がん性については、その代謝産物であるフェニル-1,4-ベンゾキノン(PBQ)が関与している可能性も示唆されています。
まとめ
輸入果物の柑橘類に使用されている「オルトフェニルフェノール」。
果物にカビが生じないよう防カビ剤として使用されていますが、発がん性を含む様々な危険性が報告されています。
OPPはポストハーベストとして果物の果皮に散布、または塗布する形で使用されますが、他の防カビ剤(TBZ、イマザリルなど)では果肉への浸透が報告されていることから、OPPも果肉に浸透している可能性は否定できません。
危険性を避けるためにも、OPPやOPP-Naが使用された果物の摂取は控えた方が良いと言えるでしょう。
コメント