着色料として使用されている「ベニバナ色素」。
植物由来の天然着色料として知られており、安全なイメージが高いことから、数多くの食品に使用されています。
確かに、合成着色料に比べれば安全性は高いかもしれませんが、果たして危険性の報告はないのでしょうか?
本記事では、ベニバナ色素の種類、食品添加物としての安全性を解説していますので、興味のある方はぜひ最後までご一読ください。
ベニバナ色素とは
ベニバナ色素とは、食品添加物の既存添加物として認可されている天然着色料の1つです。
キク科ベニバナ(Carthamus tinctorius L.)の花から抽出して得られる色素で、黄色の色素(ベニバナ黄色素)と赤色の色素(ベニバナ赤色素)が存在します。
原料となるベニバナは黄色から赤色に変化するのが特徴で、茎の先端に咲く花を摘み取ることから、別名「末摘花」とも呼ばれています。花は生薬の「紅花(コウカ)」としても知られており、婦人病や更年期の血行障害を緩和するなどの目的で漢方薬に配合されています。
ちなみに、ベニバナの種子は「サフラワー油」の原料として有名です。
ベニバナ黄色素とベニバナ赤色素について、以下で簡単に説明します。
ベニバナ黄色素
ベニバナ黄色素(カーサマス黄色素)はベニバナの花から水で抽出して得られる黄色の色素です。
主成分はフラボノイドのサフラワーイエロー(サフロミン)で、サフロミンA・サフロミンBと呼ばれる構造の異なる2種類のものが存在します。
水に溶けやすく、pHによる色調の変化がほとんど見られないほか、耐光性に優れているのが特徴です。一方、熱に対してやや弱く、加熱によって明度が下がりやすい傾向にあります。
色調としてはクチナシ黄色素よりも若干青みを帯びた鮮やかな黄色です。
原材料名では「ベニバナ黄色素」や「カーサマス黄色素」、「紅花色素」、「着色料(紅花黄)」のほか、「フラボノイド色素」や「着色料(フラボノイド)」などと表記されることもあります。
ベニバナ赤色素
ベニバナ赤色素(カーサマス赤色素)はベニバナの花から黄色素を取り除いた後、弱アルカリ性水溶液で抽出して得られる赤色の色素です。
フラボノイドのカルタミンを主成分としており、口紅などの化粧品にも使用されています。
食品に練り込む形で使われることが多く、鮮やかな赤色を呈するほか、耐光性に優れているのが特徴です。一方、熱に対して弱く、加熱によって退色しやすい傾向があります。
原材料名では「ベニバナ赤色素」や「カーサマス赤色素」、「紅花色素」、「着色料(紅花黄)」のほか、「フラボノイド色素」や「着色料(フラボノイド)」などと表記されることもあります。
ベニバナ色素の使用基準
ベニバナ色素はベニバナ黄色素、ベニバナ赤色素ともに食品添加物としての使用基準が定められており、以下の食品への使用は認められていません。
こんぶ類、食肉、鮮魚介類(鯨肉を含む)、茶、のり類、豆類、野菜、わかめ類
これらの食品は色で新鮮さが判断されることもあり、着色されていると消費者が鮮度を誤認する恐れがあるため、ベニバナ色素を含む着色料の使用は認められていません。
ただし、これら以外の食品に関しては特に使用量の最大限度や使用制限などは設けられておらず、各企業がそれぞれの判断で必要最低量のベニバナ色素を使用できるようになっています。
ベニバナ黄色素は主に菓子類や飲料、麺類などに使用され、ベニバナ赤色素は主に和菓子やチョコレートなどの菓子類に使用されます。
ベニバナ色素の海外での認可状況
日本では数多くの食品に使用されているベニバナ色素ですが、実は海外ではベニバナ色素を食品添加物として認可している国はあまりありません。
実際、2024年2月時点において、米国、欧州、中国、韓国、豪州でのベニバナ色素の認可状況はそれぞれ以下の通りとなっています。
日本 | 米国 | 欧州 | 中国 | 韓国 | 豪州 | |
---|---|---|---|---|---|---|
ベニバナ黄色素 | 〇 | × | × | 〇 | 〇 | × |
ベニバナ赤色素 | 〇 | × | × | × | 〇 | × |
上記の表の中では、ベニバナ黄色素については日本と中国と韓国、ベニバナ赤色素にあたっては日本と韓国のみが食品添加物としての使用を認めています。
このように、海外ではベニバナ色素の食品添加物としての使用をあまり認めていないのが現状です。
ベニバナ色素の安全性
このようなベニバナ色素ですが、植物に由来する天然の着色料であることから、合成着色料に比べれば安全性は高いと言えるでしょう。
実際、ベニバナ黄色素についてはラットを用いた動物実験で、死亡例や異常などは見られなかったとの報告がなされています。
しかし、ベニバナ黄色素は光遺伝毒性試験の結果、細菌(サルモネラ菌TA98)に対して遺伝子を突然変異させる作用があったとのことや、ヒト由来培養細胞(WTK-1)の生存率を低下させたことが報告されています。
ベニバナ赤色素についても、遺伝毒性試験の結果、哺乳類培養細胞(CHL/IU)に対して弱い染色体異常誘発性を有していたことが報告されています。
このように、ベニバナ色素はいくつかの安全性試験で懸念のある結果を示していることから、心配な場合には避けておいた方が安心でしょう。
まとめ
様々な食品に使用されている「ベニバナ色素」。
植物由来の天然着色料であるため、合成着色料よりは安全性は高いと言えます。
しかし、安全性試験ではいくつか懸念のある結果もあるので、心配な場合には避けておいた方が安心です。
食品への着色は必ずしも必要なものではないので、できれば着色料が使われていないものを選びたいものです。
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