食品に旨みやコクを与える目的で使用される「たんぱく加水分解物」。
調味料（アミノ酸等）とは異なり、食品添加物に分類されない物質であることから、一見安全な食品成分かと思われがちです。
しかし、たんぱく加水分解物にはいくつかの危険性があると言われています。
本記事では、たんぱく加水分解物の概要と危険性について解説していますので、興味のある方はぜひ最後までご一読ください。
たんぱく加水分解物とは？
たんぱく加水分解物とは、大豆（脱脂加工大豆）やとうもろこし、小麦（グルテン）、肉類や魚介類（ゼラチン）などのたんぱく質を加水分解して作られるアミノ酸混合物の食品素材です。
調味料（アミノ酸等）と同様、食品に旨みやコクを与える目的で使用され、多くの加工食品に使用されています。
たんぱく加水分解物は加水分解という比較的単純な加工で製造されることなどから、分類上は「食品添加物」ではなく「食品」として扱われます。そのため、たんぱく加水分解物で旨みを出している場合にも、法令上は「化学調味料不使用」「化学調味料無添加」との表示が可能です。同じ旨みを与える成分でも、両者にはこのような違いがあります。
ちなみに、たんぱく加水分解物が旨みを呈するのは、加水分解によってアミノ酸が多く生成するためです。アミノ酸は旨みの元となる成分で、様々な調味料に使用されています。有名なものとしてはグルタミン酸があげられ、グルタミン酸は「味の素」の主成分であることでも有名です。
たんぱく加水分解物が危険と言われる理由
たんぱく加水分解物が危険と言われていることについてはいくつか理由があるので、以下ではそれぞれの理由について詳しく解説していきます。
製造工程で発がん性物質が生成する
たんぱく加水分解物が危険といわれている1つ目の理由は、製造工程で発がん性物質が生成する可能性があるためです。
先ほど説明した通り、たんぱく加水分解物はたんぱく質を加水分解して得られます。この加水分解には塩酸や酵素などが用いられますが、コストの面から塩酸を用いることが一般的です。
しかし、たんぱく質を塩酸で加水分解すると、たんぱく質に微量に含まれる脂質分の「グリセリン」と塩酸が反応し、不純物として「クロロプロパノール類」と総称される一群の物質が生成することがあります。
この製造過程で生成するクロロプロパノール類にはいくつか種類がありますが、中でも「3-MCPD（3-クロロプロパン-1,2-ジオール）」と「1,3-DCP（1,3-ジクロロ-2-プロパノール）」は毒性が高いことが知られており、1,3-DCPに関しては、2006年のJECFA（FAO/WHO合同食品添加物専門委員会）で発がん性物質であることが確認されています。
引用元：農林水産省「クロロプロパノール類及びその関連物質の種類と構造」3-MCPD 1,3-DCP
ちなみに、たんぱく質は胃液でも分解されますが、胃液ではペプシンなどの酵素によって分解されるため、クロロプロパノール類が生成する心配はありません。
原料に遺伝子組み換えのものを使用している可能性がある
たんぱく加水分解物が危険といわれている2つ目の理由は、原料に遺伝子組み換えのものを使用している可能性があるためです。
たんぱく加水分解物は原料に大豆やとうもろこしを使用しているケースがありますが、そのような場合にはそれらの原料が遺伝子組み換えされたものである可能性があり、人体への影響が懸念されています。
遺伝子組み換え食品に関しては動物実験における安全性のデータから、健康被害をもたらす可能性があるとの報告がなされています。
たんぱく加水分解物は食品添加物に分類されない
先ほど説明した通り、たんぱく加水分解物は食品添加物には分類されません。
「化学調味料不使用」や「化学調味料無添加」と表示されている食品であっても、たんぱく加水分解物が含まれているケースが少なからずあります。
そのため、たんぱく加水分解物を避けたい場合には、食品の購入時に原材料名をよく見るようにして、しっかりとたんぱく加水分解物の記載がないことを確認することが大切です。
ちなみに、原材料名は「/」より後ろの成分が食品添加物に該当し、たんぱく加水分解物については「/」よりも前に記載されているので、その点については注意が必要です。
まとめ
食品に旨みを出すために加えられる「たんぱく加水分解物」。
調味料（アミノ酸等）とは異なり、食品添加物に該当しない物質ですが、以下のような危険性があると言われています。
- 製造工程で発がん性物質が生成する
- 原料に遺伝子組み換えのものを使用している可能性がある
たんぱく加水分解物に関しては無添加の表示があっても含まれている可能性があるので、避ける場合には原材料名をしっかり確認しておくことが大切です。
現状、調味料（アミノ酸等）やたんぱく加水分解物を含まない加工食品は珍しいと言われるほど少なく、完全に避けることはなかなか難しいので、ある程度は許容しつつ、ほどよく避けていけると良いかもしれませんね。
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