メベンダゾールをご存知でしょうか?
メベンダゾールは駆虫薬の1種で、日本では鞭虫症の治療薬として承認されている薬剤です。
実は、このメベンダゾールには抗駆虫作用のほかに抗がん作用があると言われており、近年数々の報告があげられています。
本記事では、メベンダゾールの抗がん作用について解説していますので、興味のある方はぜひ最後までご一読ください。
メベンダゾールとは
メベンダゾールとは、ベンズイミダゾール系駆虫薬に分類される駆虫薬の1つです。
寄生虫の1種「蠕虫」のチューブリンに強い親和性を持つのが特徴で、蠕虫の微小管形成やグルコースの取り込みを阻害し、グリコーゲンの枯渇やATPの生成阻害を引き起こさせることで駆虫作用を発揮します。
そのため、メベンダゾールは日本では鞭虫症の治療薬として承認されており、腸内の鞭虫を死滅させる目的で使用されることが一般的です。
しかし、メベンダゾールには抗駆虫作用のみならず、抗がん作用があるということが2002年の時点で既になされていました。
今日に至るまでにこのメベンダゾールの抗がん作用についての研究は活発に行われており、その報告も数多くあげられている状況となっています。
【参考文献】
1) Mukhopadhyay T, Sasaki J, Ramesh R, Roth JA. Mebendazole elicits a potent antitumor effect on human cancer cell lines both in vitro and in vivo. Clin Cancer Res. 2002 Sep;8(9):2963-9. PMID: 12231542.
2) Sasaki J, Ramesh R, Chada S, Gomyo Y, Roth JA, Mukhopadhyay T. The anthelmintic drug mebendazole induces mitotic arrest and apoptosis by depolymerizing tubulin in non-small cell lung cancer cells. Mol Cancer Ther. 2002 Nov;1(13):1201-9. PMID: 12479701.
メベンダゾールの抗がん作用の臨床報告
メベンダゾールの抗がん作用についていくつか臨床報告がなされているので、以下で紹介します。
転移性副腎皮質癌における報告
副腎皮質癌を患う48歳の男性は、ミトタン、5-フルオロウラシル、ストレプトゾトシン、ベバシズマブ、外照射療法などの全身療法を受けていましたが、疾患が進行し、すべての化学療法薬による治療が中止され、メベンダゾール100mgを1日2回、単剤で処方されました。
結果、転移は退行し、メベンダゾールを19か月間投与している間、状態は安定していました。臨床的に重大な副作用もなく、生活の質は満足のいくものであったとのことです。
しかしその後、24か月にわたるメベンダゾール単独療法の後、病気は進行したとされています。
【参考文献】
Dobrosotskaya IY, Hammer GD, Schteingart DE, Maturen KE, Worden FP. Mebendazole monotherapy and long-term disease control in metastatic adrenocortical carcinoma. Endocr Pract. 2011 May-Jun;17(3):e59-62. doi: 10.4158/EP10390.CR. PMID: 21454232.
転移性結腸直腸癌における報告①
転移性結腸癌を患う74歳の男性は、進行性のS状結腸癌を根治的に切除しましたが、同時多発性両側肺および大動脈周囲リンパ節転移が観察されました。
カペシタビン、オキサリプラチン、ベバシズマブを組み合わせた緩和化学療法、カペシタビン単独の維持治療、カペシタビンとイリノテカンによる二次治療を行いましたが、結果的に肺と腹部リンパ節に重大な進行が観察され、新たな肝臓転移も観察されました。
標準治療が残されていないこの状況で、患者はインフォームドコンセントの後、メベンダゾール100mgの投与を1日2回開始し、6週間継続しました。その結果、副作用もなく、CT評価で肺とリンパ節の転移のほぼ完全な寛解が観察され、肝臓では良好な部分寛解が見られました。
なお、この段階で肝酵素ASTおよびALTが正常の上限の最大5倍、及び7倍上回っていることが判明しましたが、メベンダゾールを一時的に中止して、その後半分の用量で再導入したところ、肝臓酵素はゆっくりと減少したとされています。
新たなCT検査では疾患は安定しており、患者は現在(この論文の報告時)休薬中で、新たなCT検査を待っているとのことです。
【参考文献】
Nygren P, Larsson R. Drug repositioning from bench to bedside: tumour remission by the antihelmintic drug mebendazole in refractory metastatic colon cancer. Acta Oncol. 2014 Mar;53(3):427-8. doi: 10.3109/0284186X.2013.844359. Epub 2013 Oct 28. PMID: 24160353.
転移性結腸直腸癌における報告②
40人の転移性結腸直腸癌を対象に、対照群(n = 20)はFOLFOX4を含むベバシズマブ6サイクルとプラセボ錠剤を1日2回、メベンダゾール群(n = 20)はFOLFOX4を含むベバシズマブ6サイクルとメベンダゾール500mgを1日2回、12週間経口投与しました。
結果、12週間で対照群で10%(2例)、メベンダゾール群で65%(13例)の改善が見られ、無増悪生存期間(PFS)も対照群で3か月、メベンダゾール群で9.25か月とメベンダゾールの摂取で有意に上昇しました。
また、メベンダゾールは癌の増悪因子である血管内皮増殖因子(VEGF)のレベルを有意に低下させたことも確認されています。
一方で、癌のマーカーである癌胎児性抗原(CEA)のレベルに関しては有意な変動は見られなかったとのことです。
なお、1年後には違いは顕著ではなくなったとされています。
【参考文献】
Hegazy SK, El-Azab GA, Zakaria F, Mostafa MF, El-Ghoneimy RA. Mebendazole; from an anti-parasitic drug to a promising candidate for drug repurposing in colorectal cancer. Life Sci. 2022 Jun 15;299:120536. doi: 10.1016/j.lfs.2022.120536. Epub 2022 Apr 3. PMID: 35385794.
メベンダゾールの抗がん作用のメカニズム
メベンダゾールの抗がん作用には、以下に記すような様々なメカニズムが報告されています。
- チューブリンの解重合
- 血管新生阻害
- がんの進行に関わるシグナル伝達経路(ヘッジホッグシグナル)の阻害
- 化学療法、及び放射線療法に対する感作の増大
- アポトーシスと細胞毒性の誘導
- キナーゼの阻害
- 抗腫瘍免疫応答の誘導
【参考文献】
Guerini AE, Triggiani L, Maddalo M, Bonù ML, Frassine F, Baiguini A, Alghisi A, Tomasini D, Borghetti P, Pasinetti N, Bresciani R, Magrini SM, Buglione M. Mebendazole as a Candidate for Drug Repurposing in Oncology: An Extensive Review of Current Literature. Cancers (Basel). 2019 Aug 31;11(9):1284. doi: 10.3390/cancers11091284. PMID: 31480477; PMCID: PMC6769799.
メベンダゾールの購入方法
先ほど説明した通り、メベンダゾールは鞭虫症の治療薬として承認されているため、一般的には鞭虫症と診断された場合に病院で処方される形になります。
病院での処方以外に購入する方法としては、個人輸入があげられます。
個人輸入代行店ではメベンダゾールが個人輸入できる店舗もあるので、一度確認してみても良いかもしれません。
なお、現時点でメベンダゾールが癌に効くという確実な保証はありませんので、その点については注意が必要です。
フェンベンダゾールとの違いは?
メベンダゾールと似た駆虫薬に”フェンベンダゾール”がありますが、フェンベンダゾールもメベンダゾールと同じく、ベンズイミダゾール系駆虫薬に分類される駆虫薬です。
しかし、フェンベンダゾールは一般的に犬用の駆虫薬として販売されており、現時点で人の駆虫薬としては承認されていません。
また、メベンダゾールと分類は同じでも薬剤としては異なるものであることから、当然効果も異なるので、それらの点において違いがあると言えるでしょう。
ただ、フェンベンダゾールについても抗がん作用が報告されており、実際に以下のような記事も存在します。
フェンベンダゾールに関しても個人輸入代行店で購入可能ですが、メベンダゾールよりは取り扱っている店舗が少ないようです。
なお、フェンベンダゾールに関しても癌に効くという確実な保証はなく、以下のような肝機能障害の報告もあるので、その点については注意が必要です。
【参考文献】
Ioakeim-Skoufa I, Tobajas-Ramos N, Menditto E, Aza-Pascual-Salcedo M, Gimeno-Miguel A, Orlando V, González-Rubio F, Fanlo-Villacampa A, Lasala-Aza C, Ostasz E, Vicente-Romero J. Drug Repurposing in Oncology: A Systematic Review of Randomized Controlled Clinical Trials. Cancers (Basel). 2023 May 30;15(11):2972. doi: 10.3390/cancers15112972. PMID: 37296934; PMCID: PMC10251882.
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