防カビ剤「イマザリル」とは?概要や危険性を解説

食品添加物
スポンサーリンク

イマザリルという物質をご存知でしょうか?

イマザリルは主に輸入果物に使用されている食品添加物であり、防カビ剤として使用されています。

食品でのカビの発生を防ぐうえで有益とされるイマザリルですが、実は危険性があるとも言われています。

本記事では、イマザリルの概要と危険性について解説していますので、興味のある方はぜひ最後までご一読ください。

スポンサーリンク

イマザリルとは

イマザリルとは、イミダゾール系防カビ剤の1つです。

ベルギーに本社を置くヤンセンファーマ株式会社の商品名として知られている名称で、物質名は「エニルコナゾール」といいます。

エニルコナゾールの構造式
エニルコナゾール

イマザリルは真菌の細胞膜構成成分であるエルゴステロールの生合成を阻害することが知られており、真菌の膜機能に異常をきたすことで防カビ作用を発揮します。

日本では1992年に食品添加物の防カビ剤(防ばい剤)として認可されていますが、農薬(殺菌剤)としては認可されていません。

ちなみに、イマザリルは以前から毒性を有することが知られており、1992年までは農薬としてはおろか、食品添加物の防カビ剤としても認可されていませんでした。しかし、当時アメリカからの輸入レモンにポストハーベスト(収穫後に農薬を使用すること)としてイマザリルが使用されており、それで食品添加物として認可されたと言われています。

イマザリルは主に輸入果物に使用されており、輸入の過程で果物が腐ることのないよう、果物の表面にコーディングする形で使用されます。ちなみに、国産の果物については輸送時間が短く、輸送過程でカビが生える心配も少ないため、イマザリルが使用されることはほとんどありません。

イマザリルはジクロルベンゼン誘導体とイミダゾールを反応させて製造されており、比較的水に溶けやすく、他の防カビ剤に比べて強い防カビ作用を発揮するのが特徴です。使用する際はその対象によって異なりますが、ワックス処理液やスプレーなどの形で使用されます。

ちなみに、日本で防カビ剤として認められている食品添加物はイマザリルを含め以下の10種類です。

  • アゾキシストロビン
  • イマザリル
  • オルトフェニルフェノール(OPP)
  • オルトフェニルフェノールナトリウム
  • ジフェニル
  • ジフェノコナゾール
  • チアベンダゾール(TBZ)
  • ピリメタニル
  • フルジオキソニル
  • プロピコナゾール

イマザリルの使用基準

イマザリルは毒性を有することが周知の物質であることから、食品添加物として使用する際には厳しい基準が設けられています。

イマザリルを食品添加物として使用する場合には、その対象はみかんを除く柑橘類とバナナに限られます。また、その使用量に関しても、みかんを除く柑橘類が5ppm(0.0050g/kg)以下バナナが2ppm(0.0020g/kg)以下と厳しい基準が設けられています。

そして、イマザリルを使用した果物については、食品表示法によって必ずその旨を分かりやすく記すよう、表示義務が課せられています。袋売りの場合にはシールなどで、バラ売りの場合には値札や陳列棚などでイマザリルが使用されていることの表示が必ず必要です。

ちなみに、イマザリルは日本において農薬としての認可はされていませんが、海外では果物に散布する農薬としての使用が認可されています。農薬としてのイマザリルにも残留基準が設けられていますが、海外からの輸入果物にはイマザリルが残っていることも少なくないので、その点については注意が必要です。

イマザリルの危険性

イマザリルは防カビ剤として使用されている一方、推定致死量はわずか20~30gとされており、毒性の高い物質であることから、危険性に関する報告も複数なされています。

例えば、マウスを用いた動物実験では、イマザリルに神経行動毒性があることが分かっています。

また、国際化学物質安全性カード (ICSCs)によると、長期または反復曝露によって肝臓に影響を与え、 機能障害や組織損傷を生じることがあるとされています。経口摂取によって吐き気を催したり、目に入った場合には充血や痛みが生じたりすることもあるそうです。

そして、厚生労働省の安全データシートにおいても、危険有害性情報の項目で「生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い」や「長期にわたる、又は反復ばく露による肝臓の障害のおそれ」との記載があります。

これらのことから、イマザリルが使用された果物の摂取はできるだけ避けた方が良いと言えるでしょう。

イマザリルは果肉まで浸透するのか

イマザリルは海外の輸入果物において表面にコーディングする形で使用されますが、果肉まで浸透するのか気になるところです。

2018年の北海道消費者協会の報告によると、メキシコ産のグレープフルーツ、アメリカ産のレモン、オーストラリア産のオレンジを調査した結果、以下のように果皮に加え果肉からもイマザリルが検出されたことが確認されています。

  • グレープフルーツ(メキシコ産)  果肉:0.04ppm 果皮:2.70ppm 全果:0.78ppm
  • レモン(アメリカ産)       果肉:0.04ppm 果皮:1.09ppm 全果:0.43ppm
  • オレンジ(オーストラリア産)   果肉:0.11ppm 果皮:1.87ppm 全果:0.64ppm

また、この際に他の防カビ剤としてチアベンダゾールとフルジオキソニル、農薬としてアゾキシストロビンを含む53種類の農薬も検査しており、それぞれ以下のような結果となっています。

引用:北海道消費者協会 「北のくらし」No.488(6ページ)

このように、イマザリルなどの薬剤は果皮に比べるとその量はわずかではあるものの、果肉にも浸透していることから、これらの薬剤が使用された果物の摂取には注意が必要と言えるでしょう。

イマザリルの除去方法

このような毒性の高いイマザリルですが、実は除去する方法がいくつか報告されています。

2018年の北海道消費者協会の報告によると、オーストラリア産のオレンジの皮に対し、「水洗い」「洗剤洗い」「塩もみ」「ゆでる」の4つの方法を試したところ、「ゆでる」で61%「塩もみ」で39%「洗剤洗い」で26%「水洗い」で21%イマザリルを除去できたことが確認されています。

また、この報告では同じ方法でチアベンダゾールの除去率も確認されており、イマザリルと合わせてそれぞれ以下のような結果となっています。

引用:北海道消費者協会 「北のくらし」No.489(7ページ)

どちらの薬剤に対しても「ゆでる」が最も除去率の高い方法であったことから、輸入果物の果皮を使用する場合には下ゆでをしておくと良いかもしれません。

なお、この調査で行われた洗浄方法の具体的な手順はそれぞれ以下の通りです。

  • 水洗い:水 2L(15℃)に2分間浸し、スポンジで水をつけて2分間こすり洗いをする。その後、流水で30秒すすぎ、水分をふき取る。
  • 洗剤洗い:洗剤液(水2Lに台所用合成洗剤1.5mL)に2分間浸し、スポンジで洗剤液をつけて2分間こすり洗いをする。その後、流水で30秒すすぎ、水分をふき取る。
  • 塩もみ:塩水(水2Lに塩20g)に2分間浸し、塩5gで2分間塩もむ。その後、流水で30秒すすぎ、水分をふき取る。
  • ゆでる:果皮のみを水2Lに10分間浸し、熱湯1Lで10分間ゆでる。その後、流水で30秒すすぎ、水分をふき取る。

ちなみに、2021年の滋賀大学の報告では、アメリカ産レモンの外皮をいくつかの方法で洗浄したところ、イマザリルの残存率が以下のようになったことが確認されています。

引用:レモンに使用される防かび剤イマザリルの残留濃度と調理過程における消長(表4)

こちらの報告では「水洗浄」が最も効果的に除去できた方法となっていますが、「ゆでこぼし」も3番目に効果的な方法となっており、北海道消費者協会の報告と合わせるとイマザリルの除去にはやはり「ゆでる」が特に効果的であると考えられます。

なお、こちらの報告で行われた洗浄の具体的な手順については、引用元の実験方法の「2. 試料の洗浄方法」に記載されていますので、興味のある方はぜひご覧ください。

まとめ

輸入果物に使用されている「イマザリル」。

防カビ剤としてカビの発生を防ぐ一方、毒性が高いことが知られており、食品添加物として使用する場合には厳しい基準が設けられています。

それだけでなく、イマザリルには複数の危険性が報告されており、できる限り摂取を控えた方が良い食品添加物と言えるでしょう。

なお、果物の果皮のイマザリルはゆでるなどの方法である程度は除去できることが確認されているため、輸入果物の果皮を使用する場合には下ゆでをしておくと良いかもしれません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました