食品の原材料名を見るとよく見かける「乳化剤」という文字。
具体的にどのような物質なのか分からないことから、不安を抱える人も少なくありません。
また、乳化剤は危険という話もありますが、どのような危険があるのか気になる方もいるかと思われます。
そこで本記事では、乳化剤とは何か、乳化剤の種類、乳化剤が危険と言われている理由について解説しています。
乳化剤について興味のある方には役に立つ内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。
乳化剤とは?
乳化剤とは、混ざり合わない物質どうしをうまく混合させる(乳化させる)ために使用される食品添加物です。
例えば、水と油は本来混ざり合わないものどうしですが、乳化剤を混ぜるとうまく混合させることができます。水と油が混合すると乳のように白く懸濁することから、このような名称で呼ばれています。
乳化では片方の液体がもう片方の液体の中に細かく分散した状態で存在しており、形態の違いから以下の2種類に分類できます。
- O/W型(Oil in Water):水中油型とも呼ばれ、水の中に油が分散した状態
- W/O型(Water in Oil):油中水型とも呼ばれ、油の中に水が分散した状態
乳化は様々な飲食物で起きており、乳飲料やアイスクリームなどはO/W型の乳化、マーガリン、バターなどはW/O型の乳化が一般的です。
乳化以外の役割
乳化剤には乳化はもちろん、それ以外に以下の7つの役割があります。
起泡
空気を抱きかかえて泡を作り、泡が消えないように保護します。
用途例:ケーキやホイップクリームなどにボリュームを持たせる
消泡
泡を液体に生じさせないようにしたり、生じた泡を消したりします。起泡とは逆の働きです。
用途例:豆腐や飲料などに泡を生じさせないようにする
分散
液体の中に細かい粒子の固体を均一に保ちます。後に出てくる可溶化のように透明な状態にはなりません。
用途例:ココアの粉末を水に分散させる
湿潤
固体の表面を液体に濡れやすく(付着させやすく)します。
用途例:プロテインなどの粉末のダマを防止する、チューインガムの歯への付着を防ぐ
滑沢
粉体の流動性を高めることで表面を滑らかにしたり、光沢を与えたりします。
用途例:食品の機械や型への接着を防ぐ、タブレット菓子やサプリメントの表面に光沢を与える
可溶化
溶けにくい物質を水に分散させて溶けたような透明な状態にします。
用途例:油性の香料を飲料に加えて可溶化する
洗浄
界面活性作用によって油汚れを水に馴染ませて除去します。
この用途では「界面活性剤」と表示され、野菜や食器などを洗う洗剤にも使用されています。
乳化剤の種類
乳化剤は何をいくつ使用しても一括表示が認められており、原材料名では「乳化剤」と表記されるだけなので、具体的に何が使用されているのかは消費者側からは分かりません。
そのため、乳化剤の種類についてはあまり広く知られていませんが、実は乳化剤として認可されている食品添加物には非常に多くのものがあります。
以下では、その中でも代表的なものについて紹介します。
グリセリン脂肪酸エステル
グリセリンの持つ3個のヒドロキシ基のうち、1~2個が脂肪酸と結合したものです。
油脂から抽出した脂肪酸とグリセリンを反応させて作られます。
乳化剤として以外に、起泡剤や豆腐用の消泡剤、デンプンの品質改良剤など、様々な用途で使用されており、安価であることから、乳化剤の中で最もよく使用されています。
ソルビタン脂肪酸エステル
糖類の1種であるソルビトールと脂肪酸が結合した乳化剤です。
単体での使用のほか、他の乳化剤との組み合わせで使用されることが多く、主に食品の滑らかさを向上させる用途で使用されています。
プロピレングリコール脂肪酸エステル
プロピレングリコールと脂肪酸が結合した乳化剤です。
油脂を含んだ食品に対して優れた起泡性を示します。
単独での乳化力はあまりないですが、他の乳化剤の性質を改良する効果があるため、2つ以上の乳化剤と組み合わせて使用されるケースが多いです。
ショ糖脂肪酸エステル
糖類のショ糖と脂肪酸が結合した乳化剤です。
無味無臭で安全性が高く、乳化剤として以外にも起泡剤や増粘剤、デンプンの老化防止などの目的でも使用されます。
ポリソルベート
ソルビタン脂肪酸エステルにエチレンオキシドを反応させて作られる乳化剤です。
脂肪酸の種類によって、ポリソルベート20、60、65、80の4種類があり、値が大きくなるにつれて親油性が増します。
レシチン
大豆やアブラナ、卵黄の油脂から抽出して得られるリン脂質で、天然の乳化剤です。
乳化剤として以外に分散剤、湿潤剤などとしても使用されるほか、レシチンを主成分とした健康食品もあります。
サポニン
大豆や茶花 、ツバキ種子から抽出して得られる天然の乳化剤です。
乳化剤や可溶化剤、起泡剤などとして使用されるほか、レシチンを配合したサプリメントなどもあります。
乳化剤の危険性
乳化剤は様々な飲食物に含まれる添加物ですが、いくつか危険性があるとも言われています。
ここでは乳化剤が危険と言われている理由を解説します。
炎症性腸疾患や代謝性疾患のリスク上昇
2015年のジョージア州立大学(アメリカ)の報告によると、乳化剤が炎症性腸疾患や代謝性疾患のリスクを上昇させる可能性があることが確認されています。
乳化剤として知られるCMC(カルボキシメチルセルロース)、及びポリソルベート80をマウスに経口摂取させたところ、食餌を一切替えていないにもかかわらず肥満になり、耐糖能異常などの代謝障害を発症したとのこと。
また、遺伝子改変で炎症性腸疾患を発症しやすくしたマウスで同様の実験を行ったところ、大腸炎の重症度が増し、その頻度が増加する傾向が見られたとされています。
このような傾向は乳化剤含有量が1%のときに最も顕著に見られたとのことです。
心血管系疾患のリスク上昇
2023年のソルボンヌ・パリ・ノール大学(フランス)の報告によると、乳化剤が心血管系疾患の発症リスクを高める可能性があることが確認されています。
この報告では約9万5千人を対象に、24時間の食事記録を2年間に3回付けてもらい、食事内容とその後平均7年間にわたる心血管系疾患の発症との関係を調査しました。
結果、セルロース、モノグリセリド、グリセリン脂肪酸エステルを中心とした乳化剤を平均よりも一定以上多く摂ると、心血管系疾患の発症リスクが優位に上昇していたことが確認されたとされています。
危険性が報告されている乳化剤もある
乳化剤の中には危険性が報告されているものもあります。
乳化剤は原材料名で一括表示できることから、このような乳化剤を使用している可能性も否定できません。
危険性が報告されている乳化剤としては、主に以下のものがあげられます。
ポリソルベート
ポリソルベート60とポリソルベート80に関しては、動物実験で発がん性の可能性が疑われています。
レシチン
大豆由来レシチンの場合には、大豆のアレルギー反応が出ることや、原料に遺伝子組み換えの大豆を使用している可能性も否定できません。
ショ糖脂肪酸エステル
ショ糖脂肪酸エステルを過剰に摂取すると催奇形性のリスクがあると疑われており、妊婦の方は控えた方がよいとされています。
まとめ
食品添加物としての乳化剤にはグリセリン脂肪酸エステルやショ糖脂肪酸エステルなど、様々な種類のものがあり、使用用途も多岐にわたります。
非常に多くの食品に使用されている乳化剤ですが、原材料名では一括表示されており、どの乳化剤が使用されているのかは消費者側からは分かりません。
また、乳化剤にはいくつか危険性も指摘されており、過剰な摂取は避けた方が良いと言えるでしょう。
乳化剤の摂取が心配な場合には、原材料名で「乳化剤」の文字があるかを確認しておくと安心です。
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