コレステロールの必要性について|sd-LDLやスタチンの注意点についても

がん
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コレステロールと聞くと不健康なイメージを持たれる方もいるのではないでしょうか。

しかし、コレステロールは体内の生理機能を保つうえで重要な物質です。

本記事では、コレステロールの必要性や注意点としてのsd-LDL、スタチンのリスクなどについて解説していきます。

コレステロールについて知りたい方には役に立つ内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。

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コレステロールは必要

コレステロールは不健康なイメージが根強く、あまり良い印象を持たれていない方もいるかもしれません。

しかし、コレステロールは我々の体にとって必要な成分の1つです。

コレステロールには主に以下のような役割があり、体の生理機能を維持するうえで重要な役割を果たしています。

細胞膜の構成成分の1つ

私たちの体を構成する細胞の1つ1つは細胞膜で覆われており、その細胞膜は主にリン脂質、膜タンパク質、コレステロールで構成されています。コレステロールは細胞膜の構成成分として細胞の修復に必要になるほか、細胞膜の機能性や流動性を調節するなどの役割を果たしています。

ステロイドホルモンの原料

コレステロールは体内でステロイドホルモンの原料になります。男性ホルモンのアンドロゲン、女性ホルモンのエストロゲン、黄体ホルモンのプロゲステロンなどはコレステロールが原料になっているのです。ちなみに、抗ストレスホルモンのコルチゾールもコレステロールが原料になっています。

胆汁と胆汁酸の原料

胆汁は主に胆汁酸、リン脂質、コレステロール、胆汁色素(ビリルビン)で構成されており、コレステロールは胆汁を構成する1成分となっています。また、胆汁酸に含まれるコール酸やデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、リトコール酸などもコレステロールが原料です。

コレステロールが低いと総死亡率が上がる

コレステロールが低いと総死亡率が上がるという報告が複数あります。

引用:コレステロール医療の方向転換―緊急の課題 Fig.13(こちらの元となった文献はこちら
引用:コレステロール論争-上島氏の論文に対する反論 図4(こちらの元になった文献はこちら

中でも、がんや脳卒中などによる死亡リスクはコレステロールが低い方が高いと言われています。

もちろん、コレステロールが高すぎるのは問題で、心筋梗塞などのリスクが上がると言われていますが、低ければそれ以外のリスクが増えることになるため、低ければ良いということでもないのです。

がん細胞は増殖速度が速く、コレステロールをより多く必要とするため、がんに関してはがんになっている結果としてコレステロールが低いという話もあります。

このあたりの内容は以下の書籍が参考になります。

コレステロールは下げるな

コレステロールは多くが体内で合成されている

コレステロールは体内で様々な役割を果たしており、欠かすことはできません。

そのため、体内ではコレステロールが常に供給できるよう、血漿コレステロールの7〜8割は肝臓で合成されています

コレステロールと聞くと食事から摂っているイメージがあるかもしれませんが、実は食事由来のコレステロールは2〜3割程度で、血漿コレステロールのほとんどは肝臓で合成されているのです。

コレステロールは糖、タンパク質、脂質を原料にして合成されています。

そして、食事由来のコレステロールが増えると肝臓での合成量が減り、食事からの摂取が減った場合には肝臓での合成量が増えるというように、体内のコレステロール量には恒常性が保たれています。

ちなみに、食事でコレステロールを摂るとその分体内のコレステロールも増えると思われがちですが、コレステロールを食事で摂っても体内のコレステロール量はほとんど変わらないことがこの理屈から分かると思います。

体内コレステロールの約1/4(神経系を含めると約1/3)は脳にあると言われており、脳にとってコレステロールは他の部位以上に欠かせない物質と言えます。ただ、コレステロールは血液脳関門をほとんど通過できないと言われているので、脳のコレステロールについてはそのほとんどは脳細胞で合成されているものと考えられます。

LDLコレステロールについて

コレステロールには大きく分けて、LDLコレステロールとHDLコレステロールがあります。LDLコレステロールは低密度リポタンパク質(LDL)に含まれるコレステロールで、HDLコレステロールは高密度リポタンパク質(HDL)に含まれるコレステロールのことです。

LDLとHDLはそれぞれ異なるコレステロールの運搬形式を指しており、LDLが肝臓から末梢組織への運搬を、HDLが末梢組織から肝臓への運搬を担っています。

LDLは悪玉と言われることもありますが、肝臓から末梢組織へのコレステロール運搬を担っていることから、LDLがないとコレステロールが抹消組織に届かなくなります。そのため、HDLはもちろんですが、LDLについても当然必要です。

実際、LDLが少ないと総死亡率が上がるという報告もあります。

引用:コレステロール論争-上島氏の論文に対する反論 図2(こちらの元となった文献はこちら
引用:Association between low density lipoprotein cholesterol and all-cause mortality: results from the NHANES 1999–2014 Figure 1 C

LDLについても多すぎは冠動脈疾患による死亡リスクが上がるなど問題はありますが、抹消組織へコレステロールを届けるためにも、ある程度は必要になってきます。

sd-LDLについては注意が必要

LDLには粒径サイズが大きいlarge buoyant LDL(lb-LDL)と小さいsmall dense LDL(sd-LDL)が存在します。

このうち、sd-LDLについては注意が必要です。

sd-LDLはLDL受容体との親和性が相対的に低いため、血管内を長時間循環しやすく、活性酸素によって酸化されやすくなっています。

血管内におけるLDLの循環時間について、通常LDLは約2日間ですが、sd-LDLは約5日間と言われています。

それだけでなく血管内皮のペプチドグリカンとの親和性も高いため、血管壁に侵入しやすいという特徴もあります。

そのため、sd-LDLはマクロファージに取り込まれて泡沫細胞へと変化しやすく、動脈硬化の原因になりやすいと言われているので、注意が必要です。

一方でlb-LDLにはこのようなことはないため、LDL全体としてはlb-LDLが多く、sd-LDLは少ない方が良いと言えるでしょう。

ちなみに、sd-LDLは中性脂肪(トリグリセリド)が高く、HDLが低いと多くなりやすいので、このような状態の場合には少し注意が必要かもしれません。

sd-LDLは保険適用外で検査できるほか、以下のような「LDL window」という判断の目安もあるので、一度確認してみると良いかもしれません。

LDL window:
non-HDLコレステロールが170mg/dl以上、かつ中性脂肪(トリグリセリド)が150mg/dl以上の場合には、sd-LDLコレステロールが高い可能性があると判断される。
non-HDLコレステロール=総コレステロール−HDLコレステロール

LOX-index(R)という検査もあります。

【参考】
small dense LDL(超悪玉コレステロール)測定について
https://lala-clinic.jp/article.php/20180918163539479
Small dense LDL
Low-Density Lipoprotein Subfractions and the Long-Term Risk of Ischemic Heart Disease in Men: 13-Year Follow-Up Data From the Québec Cardiovascular Study
リポ蛋白質の分析と症例-LDLサイズの測定法およびsmall, dense LDLの臨床的意義

スタチンは副作用が多い

コレステロール降下薬の1つにスタチンと呼ばれるものがあります。

スタチンはコレステロール合成の律速酵素であるHMG-CoA還元酵素を阻害する薬で、高コレステロール血症に対して使われることが多いです。

しかし、コレステロール合成経路はビタミンD3やビタミンK2、CoQ-10などと合成経路を一部共有しており、上流のHMG-CoA還元酵素を阻害するとこれらの合成も阻害することになってしまいます。

引用:ステロール代謝と骨格筋機能:医・食・薬からの統合的知見 図1

そのため、スタチンには数多くの副作用が報告されているのが現状です。

スタチンの例:フルバスタチンシンバスタチンなど

ちなみに、日本人を対象にした大規模臨床試験J-LIT(Japan Lipid Intervention Trial)では、シンバスタチンでコレステロールを下げるとコレステロールが低い方が総死亡率や癌死亡率が高くなるという結果が出ています。

引用:コレステロール医療の方向転換―緊急の課題 Fig.16(こちらの元の文献はこちら

この結果からもコレステロールが低いのは問題であることが分かるかと思われます。

コレステロールは脳においては神経のミエリン鞘の構成成分にもなっているので、血液脳関門を通過したスタチンが脳機能に影響を及ぼす可能性も十分に考えられます。実際、コレステロールが低いと認知症になりやすいとも言われています。

一般的にコレステロールは血液脳関門を通過しないと言われているため、血漿コレステロールと脳のコレステロールはそれぞれ由来が異なると思われます。しかし、血漿コレステロールが低いと認知症などのリスクが上がるという報告もあるため、血漿コレステロールと脳のコレステロールが相互に関係している可能性もあるかもしれません。

家族性高コレステロール血症の場合や緊急時などにはやむを得ないかもしれませんが、そうでない場合には基本的にはスタチンの服用は慎重になった方が良いかもしれません。

LDLコレステロールが高い場合でも、中性脂肪やHDLによってはlb-LDLが多いだけかもしれないので、まずは上記のLDL windowなどで確認しておくのがおすすめです。

【参考文献】
日本には高コレステロール血症を危険とする確かなデータは存在しない!
コレステロール理論の諸問題
冠動脈疾患二次予防における脂質管理─LDL-windowの有用性
総コレステロール値の判定に纏わる問題点

【動脈硬化に関連すると言われているレムナントやsPLA2、ApoBについての文献】
レムナントリポ蛋白とnon-HDLコレステロール
sPLA2群の生体内機能と脂質メタボロミクス
ホスホリパーゼA2
https://www.cosmobio.co.jp/product/detail/mab_20100617.asp?entry_id=10486#:~:text=ApoB%2D100%20%E3%81%AF%20LDL%20%E3%81%AE%E4%B8%BB%E8%A6%81%E3%81%AA%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%91%E3%82%AF%E8%B3%AA%E6%88%90%E5%88%86%E3%81%A7%E3%81%99,%E3%81%AE%E4%BA%88%E6%B8%AC%E5%9B%A0%E5%AD%90%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

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