アミグダリンという成分をご存知でしょうか?
アミグダリンはビタミンB17として知られている物質で、枇杷の種などに含まれている成分の1つです。
実は、このアミグダリンには抗癌作用があると言われており、癌への効果が期待できる成分として注目を集めています。
本記事では、アミグダリンの抗癌作用や摂取方法について解説していますので、興味のある方はぜひ最後までご一読ください。
アミグダリンとは
アミグダリンとは、ビタミンB17とも呼ばれている青酸配糖体の1種です。
化学式「C20H27NO11」で表され、1分子のシアン化水素、1分子のベンズアルデヒド、2分子のグルコースが結合した構造をしています。
主にバラ科植物(杏、枇杷、桃、プラム、ビターアーモンド、梅など)の種子に多く含まれており、未成熟な果実にも含まれています。
アミグダリンは1830年代に2人のフランス人化学者によってビターアーモンドから単離され、早い段階から抗癌作用を有していることが確認されていました。実際、ロシアでは1845年には抗がん剤として使用されており、アメリカでも1920年代にがんの治療法として初めて使用されたとの記録があります。
1950年代にはエルンスト・T・クレブス博士がアミグダリンを静脈注射薬として製造し、これを「レートリル」として特許を取得したため、アミグダリンはレートリルと呼ばれることも少なくありません。
ちなみに、アミグダリンをビタミンB17と名付けたのも同じエルンスト・T・クレブス博士です。
アミグダリンとレートリルとの違い
先述の通り、アミグダリンはレートリルと呼ばれることもあり、両者は同一のものとして扱われがちですが、厳密には両者は異なるものを指します。
まず、アミグダリンは自然界の植物に存在する天然の物質ですが、レートリルはアミグダリンの一部を人工的に合成した半合成形態のアミグダリンであり、天然の物質ではありません。
また、両者には構造的な違いもあり、アミグダリンが「D-マンデロニトリル-β-D-グルコシド-6-β-グルコシド」を指す一方、レートリルは「L-マンデロニトリル-β- D-グルクロニド」を指します。
作用についてはほとんど同じですが、可溶性についてはレートリルの方が高いとされており、過剰摂取に伴う有毒性(後に紹介)についてはレートリルの方が注意すべきと言えるでしょう。
アミグダリンの抗癌作用
アミグダリンが抗癌作用を発揮するのは、代謝によってシアン化水素とベンズアルデヒドが生成されるためです。
アミグダリンはβ-グルコシダーゼという酵素によって分解され、プルナシンとグルコースに変化します。生成したプルナシンはβ-グルコシダーゼによってさらに分解され、マンデロニトリルとグルコースに、そしてマンデロニトリルはシアン化水素とベンズアルデヒドへと変化します。シアン化水素とベンズアルデヒドは毒性が高い化合物なので、代謝によってこれらを生成した細胞は死滅へと追い込まれるのです。
β-グルコシダーゼはアミグダリンを分解することから、別名「アミグダーゼ」とも呼ばれています。
β-グルコシダーゼは癌細胞には多量に存在しますが、正常細胞にはほとんど存在しません。そのため、アミグダリンは癌細胞で選択的に分解され、代謝で生じたシアン化水素とベンズアルデヒドによって癌細胞は死滅へと追い込まれます。これがアミグダリンの抗癌作用のメカニズムです。
なお、正常細胞にはシアン化水素を無害なチオシアン酸塩に変換するロダネーゼという酵素が豊富に存在するため、仮に正常細胞でアミグダリンが分解されても毒性はないとされています。ちなみに、癌細胞はロダネーゼをほとんど含まないため、シアン化水素を無毒化することはできません。
ベンズアルデヒドの抗癌作用については以下の記事でも解説していますので、ぜひ参考にしてください。
アミグダリンの代謝過程で生じるプルナシンやマンデロニトリルもバラ科植物の種子に含まれており、同様の効果が期待できると考えられます。
アミグダリンの抗癌作用の臨床報告
アミグダリンは1978年に行われた国立がん研究所(NCI)の臨床試験では癌への効果はないとされていますが、アミグダリンが抗癌作用を示した臨床報告はいくつか存在します。
例えば、1978年に行われた上記の臨床試験では、評価可能な67人のうち2人が完全奏効、4人が部分奏効を示したことが確認されています。奏功を示したとされる人数の報告は少ないものの、臨床で抗癌作用が確認された一例と言えるでしょう。
また、「Dramatic response to Laetrile and cannabidiol (CBD) oil in a patient with metastatic low grade serous ovarian carcinoma」と題する症例報告では、レートリルとCBDオイルで癌が改善したことが報告されています。
この報告では、81歳の女性が低悪性度漿液性卵巣癌(LGSOC)と診断され、代替療法としてレートリル錠剤(500 mgを1日4回経口投与)とカンナビジオール(CBD)オイル(毎晩舌下1滴)を行ったところ、開始から1ヶ月で腫瘍マーカーCa-125の値が半分以下になり、画像検査でも腫瘍サイズの縮小が確認されました。開始から6ヶ月後の再画像検査では劇的な軽減が示され、特定されていたすべての病変がほぼ完全に解消されたことが確認されています。
このように、アミグダリンの抗癌作用を示す臨床報告は複数存在するのです。
長寿村として知られるフンザ
パキスタンのフンザは平均寿命が90歳以上という長寿の地域です。
1920年代にヨーロッパから訪問した医療チームの調査によると、フンザでは癌が見つからなかったことが報告されています。
フンザの人々は杏(アプリコット)を種と一緒に常食しており、1年のうちの旬の3か月間は生の杏を、残りの期間は干した杏を食べていると言われています。
フンザの人々はこのような食事で1日平均50~75mgのアミグダリンを摂取しているとされており、このような食生活が長寿と関連している可能性が示唆されています。
ビタミンB17と命名された理由
多くのビタミンには摂取が不足することで生じる欠乏症というものがあります。
例えば、ビタミンCは壊血病、ビタミンB12は悪性貧血、ビタミンB3(ナイアシン)はペラグラなどです。
アミグダリンをビタミンB17と命名したのはエルンスト・T・クレブス博士ですが、クレブス博士はアミグダリンにも同じような欠乏症があると考えており、そのような考えからこの命名をしたと言われています。
そして、クレブス博士によると、このアミグダリンの欠乏症と考えられるのが癌であり、癌はビタミンB17の欠乏によって罹患リスクが高まるとされています。
アミグダリンの摂取方法
アミグダリンはバラ科植物の種に多く含まれていることから、基本的にバラ科植物の種を食べることで摂取できます。
アミグダリンを多く含むバラ科植物としては、杏、枇杷、桃、プラム、ビターアーモンド、梅などが有名です。
中でも生のビターアーモンドは最もアミグダリン含有量が多いことが知られており、2番目に多いのが杏、次いでチェリー、りんご、桃、ネクタリン、プラム、梨、プルーンに多いと言われています。
杏の種に関してはアミグダリン含有量が多いことに加え、商品としての取り扱いもあることから、アミグダリンの摂取方法として世界的に有名です。
ちなみに、杏の種(アプリコットカーネル)は「メープルフォレスト(Maple Forest)」や「Raw Food And Vitamins」などのサイトで購入できます。
なお、人工的に作られたアミグダリン・レートリルサプリメントは毒性が高くなる恐れがあるので、その点については注意が必要です。できれば杏などの天然の食べ物から摂るのが望ましいでしょう。
日本では枇杷の種や葉を使用した方法が有名です。
アミグダリン摂取の注意点
癌細胞は糖の吸収性が非常に高いという特徴があり、アミグダリンを取り込む際にも構造中のグルコースを目印にしていると言われています。そのため、事前に砂糖などを摂取してしまうと癌細胞がグルコースで満たされてしまい、アミグダリンの取り込みが減少してしまう可能性も否定できません。
また、癌細胞にはアミグダリンを分解するβ-グルコシダーゼが多く存在しますが、アミグダリンを過剰摂取した場合には癌細胞での処理が追い付かない可能性も出てきます。
このような場合には正常細胞にアミグダリンが取り込まれてしまい、場合によってはシアン化水素の毒性などが現れてくることがあるので、その点については注意が必要です。アミグダリンを摂取する場合には過剰摂取は控え、摂取前後の1時間程度は砂糖を含む飲食物の摂取も控えた方が良いでしょう。
症状として吐き気やめまい、頭痛などを感じた場合にはシアン化水素の毒性などが出ている可能性があるので、アミグダリンの摂取量を減らすか、砂糖を含むものを一切食べないようにすることが大切です。
なお、人工的なアミグダリン・レートリルサプリメントには過剰摂取による毒性がいくつか報告されているので、特に注意が必要と言えます。先ほど説明した通り、アミグダリンはできれば杏などの天然の食べ物から摂るのが望ましいと言えるでしょう。
そのほか、サプリメントの場合には他のサプリメントや薬(血圧降下剤など)との併用にも注意が必要です。
アミグダリン構造中のシアン化水素、及びベンズアルデヒドは結合によってロックされた状態になっているので、アミグダリン自身には毒性はありません。ビタミンB12としてサプリメントなどに配合される「シアノコバラミン」も構造中にシアン化物を含みますが、これも結合でロックされているため、毒性を示さないようになっています。
【参考】Maple Forest「アミグダリンの働きと注意点」
まとめ
バラ科植物に多く含まれている「アミグダリン」。
癌細胞に選択的にシアン化水素とベンズアルデヒドを発生させることから、癌への効果が期待されています。
アミグダリンは杏の種や枇杷の種などに多く含まれていることから、これらの種を工夫して食べることで摂取することが可能です。
ただし、過剰摂取した場合など、摂取量や摂取方法によっては毒性が出てくることもあり得るので、その点については注意が必要になってきます。
アミグダリンを摂る場合にはできるだけ杏などの天然の食べ物から摂るのが望ましいでしょう。
ちなみに、アミグダリン研究者としてはクレブス博士が有名ですが、1974年に出版された「A World Without Cancer」の著者G・エドワード・グリフィン博士もアミグダリン研究者として知られています。
【参考】
1. Onco-immunity and therapeutic application of amygdalin: A review
2. Amygdalin as a Promising Anticancer Agent: Molecular Mechanisms and Future Perspectives for the Development of New Nanoformulations for Its Delivery
3. Amygdalin: A Review on Its Characteristics, Antioxidant Potential, Gastrointestinal Microbiota Intervention, Anticancer Therapeutic and Mechanisms, Toxicity, and Encapsulation
4. https://www.1cure4cancer.com/cancer-cure-information/
5. https://www.naturalnews.com/031336_laetrile_cancer_cells.html
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