着色料として使われている「アナトー色素」。
様々な食品に使われていることから、原材料名で見かけることも少なくありません。
天然の着色料として知られている色素ですが、果たして安全性はどうなのでしょうか?
本記事では、アナトー色素の食品添加物としての安全性を解説していますので、興味のある方はぜひ最後までご一読ください。
アナトー色素とは
アナトー色素とは、食品添加物の既存添加物として認可されている天然着色料の1つです。
ベニノキ科ベニノキ(Bixa orellana L.)の種子の被覆物から抽出される黄色~橙色の色素で、カロテノイドのノルビキシン、及びビキシンを主成分としています。
光に対してやや弱い側面があるものの、熱に対する安定性は高く、加熱すると黄色く発色するのが特徴です。
また、油に溶けやすい性質があるほか、タンパク質と結合すると赤く変化するという特徴もあり、食品に赤味を出す目的でも使用されています。
原材料名では「アナトー」や「アナトー色素」のほか、「カロチノイド」、「カロチノイド色素」、「カロテノイド」、「カロテノイド色素」などと表記されることも少なくありません。
ちなみに、ベニノキは中南米原産の常緑低木で、現地では古くからボディペイントや化粧などの色素として使用されています。フィリピンなどでも高価なサフランの代わりに、香辛料や着色料などとして使用されているのが現状です。
水溶性アナトーとは
水溶性アナトーとは、ノルビキシンのアルカリ塩(ナトリウム塩、またはカリウム塩)のことです。
油溶性のビキシンがアルカリ性水溶液で加水分解されたもので、文字通り水溶性を示すのが特徴となっています。
通常のアナトー色素は食品を黄色~赤色に着色する目的で使用されますが、水溶性アナトーはチーズカラーとも呼ばれており、古くから乳製品などの着色に用いられています。
ちなみに、水溶性アナトーはノルビキシンのアルカリ塩であることから、分類上は化学合成品として扱われ、食品添加物としては指定添加物の合成着色料に分類されています。
しかし、原材料名では「アナトー」や「アナトー色素」などと表記されることが多いため、消費者側からは通常のアナトー色素との区別ができません。
水溶性アナトーは「着色料(ノルビキシンK)」や「着色料(水溶性アナトー)」などと表記されることもありますが、基本的には通常のアナトー色素と同じように表記されることが多いです。
アナトー色素の使用基準
アナトー色素と水溶性アナトーにはそれぞれ使用基準が定められており、どちらも以下の食品への使用は認められていません。
こんぶ類、食肉、鮮魚介類(鯨肉を含む)、茶、のり類、豆類、野菜、わかめ類
これらの食品は色によって新鮮さが判断されることもあり、着色されていると消費者が鮮度を誤認する恐れがあることから、アナトー色素を含む着色料の使用は認められていません。
ただし、これら以外の食品に関しては特に使用量の最大限度や使用制限などはなく、各企業がそれぞれの判断で必要最低量のアナトー色素を使用できるようになっています。
アナトー色素が使われる食品としては、主にチーズなどの乳製品、アイスを含む菓子類、ハムやソーセージなどの水産加工品があげられます。
中でも抹茶アイスはアナトー色素が使われる菓子類として有名で、コストダウンを図るために本来の抹茶に加え、アナトー色素で色が出されていることも珍しくありません。ちなみに、アナトー色素はソフトクリームのカップコーンにもよく使用されていると言われています。
アナトー色素は化粧品の口紅などに使われることもあります。
アナトー色素の安全性
このようなアナトー色素ですが、植物に由来する天然着色料であることから、合成着色料に比べれば安全性は高いと言えるでしょう。
動物実験でも急性毒性を含む毒性は認められておらず、色素自体の安全性は高いと考えられます。
しかし、ベニノキの栽培地域では水銀汚染が確認されており、原料となるベニノキが水銀によって汚染されている懸念があります。
実際、2009年にはアナトー色素に水銀が含まれているとの報道が出ており、東京都の研究所が6社7製品の残留重金属を調査したところ、1製品から0.04µg/gの水銀が検出されています。以後は安全性を確認しながら使用されているとのことですが、やはり水銀汚染のリスクは否定できないと言えるでしょう。
水銀は脂溶性の毒物で、神経細胞に障害をもたらす恐れがあり、妊婦が長期間摂取した場合には胎児に何かしらの影響が及ぶ可能性も出てきます。
また、他の添加物と複合摂取した際の危険性についても分かっていないので、できれば避けておいた方が無難と言えるでしょう。
まとめ
着色料として多くの食品に使用されている「アナトー色素」。
天然の着色料であることから、合成着色料に比べれば色素自体の安全性は高いと言えるでしょう。
しかし、アナトー色素は原料となるベニノキに水銀汚染の懸念があるほか、他の添加物との複合摂取による危険性は分かっていないので、できれば避けておいた方が無難です。
食品への着色は必ずしも必要なものではないので、できれば着色されていないものを選びたいものです。
コメント