天然甘味料として知られている「ラカンカ抽出物」。
食品添加物の中では比較的新しい部類のもので、安全性の高い天然甘味料として注目を集めています。
しかし、甘味料としての使用歴が浅いことから、安全性については少し心配な部分があるという声も少なくありません。
また、似たような名前に「ラカント」というものがありますが、ラカントとはどのように違うのか、気になる方もいるかと思われます。
そこで本記事では、天然甘味料として知られる「ラカンカ抽出物」について、安全性やラカントとの違いを解説しています。ラカンカ抽出物の安全性やラカントとの違いを知りたい方には役に立つ内容となっていますので、ぜひ最後までご一読ください。
ラカンカ抽出物とは
ラカンカ抽出物とは、ラカンカ(羅漢果)の果実から水やメタノール、エタノールで抽出・精製して得られる天然の甘味料です。
別名「ラカンカエキス」とも呼ばれており、食品添加物(既存添加物)の甘味料として使用されています。
羅漢果は中国南部の広西チワン族自治区を原産とするウリ科の多年草植物で、中国では古くから民間療法に使用されています。
希少性の高い植物で、中国政府から重点保護植物に指定されていることから、生の状態での国外への持ち出しは禁止されているのが現状です。そのため、日本では基本的に乾燥状態のものやエキスになったものしか見ることができません。
ラカンカ抽出物の成分と特徴
ラカンカ抽出物はトリテルペン配糖体のモグロシド類を主成分としており、モグロシドVをはじめ、11-オキソ-モグロシドVやモグロシドⅣ、シアミノサイドⅠ、モグロシドⅢなどを含んでいます。
これらはどれも強い甘味を有するのが特徴で、砂糖を1とした場合の甘味強度はそれぞれ以下の通りです。
モグロシド類 | 甘味強度(砂糖:1) |
---|---|
モグロシドV | 378倍 |
11-オキソ-モグロシドV | 68倍 |
モグロシドⅣ | 300倍 |
シアミノサイドⅠ | 465倍 |
モグロシドⅢ | 195倍 |
【参考】
1. 羅漢果の甘味料への活用
2. サラヤが進めるロカボ -『ラカント』および『へるしごはん』の開発-
3. 長寿の神果「ラカンカで実現するおいしさと健康」
日本ではこのうち「モグロシドV」の含有量が20%以上のものを食品添加物として認めており、20%未満のものは食品として扱われます。
モグロシドは強い甘味を有するにもかかわらず、糖として吸収されないことから、摂取しても血糖値に影響を及ぼしません。そのため、ラカンカ抽出物は「カロリーゼロ」や「糖類ゼロ」をうたう商品に配合されるケースが多くなっています。
ちなみに、ラカンカ抽出物の甘味度は精製度合いによって異なりますが、食品添加物規格のものでは一般的に砂糖の300倍程度と言われています。
ラカントとの違い
ラカンカとよく似た名前で「ラカント」と呼ばれるものもありますが、ラカントはサラヤ株式会社が販売する「ラカントシリーズ」に由来する名称です。
サラヤのラカントシリーズは原材料にラカンカ抽出物を使用しているのが特徴で、植物由来の天然甘味料製品として知られています。
ラカントはそれ自身が食品添加物として認可された天然甘味料というわけではなく、あくまでラカンカを含むサラヤの商品名であるため、その点については注意が必要です。
ラカンカ抽出物の海外の認可状況
日本で天然甘味料として使用されているラカンカ抽出物ですが、実は海外ではラカンカ抽出物を食品添加物として認可していない国もあります。
実際、2024年2月時点において、米国、欧州、中国、韓国、豪州のラカンカ抽出物の認可状況はそれぞれ以下の通りとなっています。
日本 | 米国 | 欧州 | 中国 | 韓国 | 豪州 | |
---|---|---|---|---|---|---|
ラカンカ抽出物 | 〇 | 〇 | × | 〇 | × | 〇 |
上記の表の中では、日本、米国、中国、豪州ではラカンカ抽出物の食品添加物としての使用を認めていますが、欧州と韓国では認可されていません。
このように、海外では食品添加物としてラカンカ抽出物の使用を認可していない国もいくつか見られます。
ラカンカ抽出物の安全性
ラカンカ抽出物は天然甘味料であることから、合成甘味料よりは安全性は高いと言えるでしょう。
実際、ラカンカは中国で古くから民間療法に使用されており、このことからも安全性は高いと言えます。
しかし、ラカンカ抽出物は甘味料としての使用歴が浅いことから、食品添加物としての安全性を不安視する声もあります。
現状として、ラカンカ抽出物には以下のような危険性があるとも言われているので、摂り過ぎには注意が必要と言えそうです。
甘味に鈍感になりやすい
ラカンカ抽出物は一般的な砂糖よりも約300倍甘く、この強い甘味に慣れてしまうと甘味に対して鈍感になる可能性が指摘されています。甘味に鈍感になってしまうとより甘いものを欲するようになり、砂糖などの摂取量が増えてしまうことにもなりかねません。
また、摂取しても血糖値が上昇しないことから、エネルギーの恒常性が崩れる可能性があり、脳の反応を介して摂食行動などが促され、むしろ太りやすくなるという指摘もあります。
食べ過ぎで消化器官の不調を起こす可能性
ラカンカは食物繊維を多く含むことから、適量の摂取は腸内環境の改善に役立つと言われています。
しかしその反面、摂取しすぎると胃もたれや下痢などの消化器官の不調を招く恐れがあり、大量摂取には注意が必要と言えるでしょう。
安全性試験で懸念のある結果
ラカンカ抽出物は食品添加物として安全性試験が行われており、安全性についてはほとんど問題ないとされています。
しかし、哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いた染色体異常試験の報告では、染色体異常誘発性に関して陽性との判断が出されています。
他の安全性試験については問題なしと言えますが、この点については懸念のある結果となっており、安全性に関して不安を完全に払拭できているわけではありません。
ラカンカ抽出物を含む製品の注意点
サラヤのラカントシリーズをはじめ、ラカンカ(ラカンカエキス・ラカンカ抽出物)が含まれることをうたう製品はいくつかあります。
しかし、実際にはこれらの製品にはラカンカは1%程度しか含まれておらず、残りの99%は糖アルコールの「エリスリトール」であることが多いです。
エリスリトールはカロリーゼロの表記が認められている甘味料で、ラカンカよりも値段が安く、砂糖の70~80%の甘味度を持つなどの特徴があります。そのため、コストの削減と甘味度を砂糖に近くする目的で、これらの製品に使用されることが多いのです。
しかし、2023年にNature Medicineに掲載された報告によると、エリスリトールは心血管疾患リスクの増大と関係している可能性が示唆されており、これらの製品の過剰摂取には注意が必要と言えるでしょう。
まとめ
天然甘味料として知られている「ラカンカ抽出物」。
合成甘味料に比べれば安全性は高いと言えますが、大量摂取による危険性の報告もあるので、摂り過ぎには注意が必要と言えます。
また、ラカンカとラカントは名前がよく似ていますが、ラカントはラカンカを含むサラヤの商品名なので、その点を間違えないようにしましょう。
ラカンカを含む製品の多くはラカンカが1%程度であり、残りの99%程度はエリスリトールなので、その点についても注意が必要です。
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